予防・感染対策

ポビドンヨード液によるうがいでコロナは防げるか?

今日、大阪で「ポビドンヨード液のうがいで唾液中のコロナウイルス陽性率が低下」と発表されたため、ドラッグストア等でヨードうがい液が即、売り切れたそうです。

しかし、この発表をそのまま言葉通りに受け取るのは慎重にした方が良いと思います。

医学の研究を行うとき、ある薬や治療の効果があるかどうかは、2つまたはそれ以上の薬や治療について、それを使用する患者さんをランダムに振り分けて、結果を比較しないといけません。もし「ポビドンヨード液のうがいに効果があるのでは?」ということを証明したいのであれば、一定数の患者さんを、「ポビドンヨード液でうがいする患者さんたち」「水でうがいをする患者さんたち」「うがいをしない患者さんたち」の3つのグループにランダムに割り振って、その結果を比べなくてはいけません。今回の発表では、報道によって内容が異なるので断言はできないのですが、「ポビドンヨードのうがいをする患者さんたち」と「うがいをしない患者さんたち」を比較していると書いてある記事が多いようです。これですと、ポビドンヨードに効果があるのか、それとも液体でうがいをすることに効果があるのかの違いが分かりません。

ちなみに、京都大学は2005年に、ヨード液によるうがい・水によるうがい・何もしないの3つを比較すると、水によるうがいは何もしない人よりも風邪をひかなかったが、ヨード液によるうがいは風邪予防の効果がなかったことを発表しました。

http://www.kyoto-u.ac.jp/notice/05_news/documents/051028.htm

また、ポビドンヨード液で頻回にうがいをすると、口・のどの粘膜の常在菌(外からくる細菌やウイルスの侵入を防いでくれる)を減らしてしまい、かえってその後、感染に弱くなってしまうことも知られています。

そもそも、うがいをしたあとに唾液のPCRをするとのことですが、うがいをして洗い流した後の唾液中のウイルス量が少ないのは当たり前です。うがいのあとにウイルス量が減って感染力が低下することを証明したいのであれば、例えばうがいをしたあと1時間おきに咳をして、排出されたウイルスの量を調べるようなことをしないといけません。

この報道内容を悪用する人が出ることも懸念されます。体調が悪いけれどもコロナウイルス陰性の証明が欲しいため、ポビドンヨードで何回もうがいをした後にPCR検査を受けに行く人がいたら、どうなるでしょうか。体内にコロナウイルスがいるのに口の中には一時的にウイルスがいなくなり、検査は陰性になる可能性があります。この人が陰性の証明を得て普通に外出したらどうなるでしょうか。

あわててドラッグストアにうがい液を買いに行く必要はありません。三密を避け、外出から帰宅したらハンドソープで手を洗い、水でうがいをする。今まで通りのエチケットを継続しましょう。

* ちなみに、Povidone-iodine なので「ポビドンヨード」が正しいです。「ポピドンヨード」ではありません。

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